1.Sox9の転写機能および軟骨細胞誘導能を促進する転写制御因子のクローニング II型コラーゲンレポーター遺伝子を用いて、Sox9と転写ファクトリーを形成する分子の探索を行った結果、Aridファミリーに属する転写因子Mrf1を同定した。免疫共沈降法の結果、Mrf1は、Sox9と物理的に結合することが明らかとなった。また、Mrf1は、軟骨細胞株ATDC5の核内でSox9と共局在することも見出さした。さらに、Mrf1は、Sox9の転写活性を著明に促進した。 以上の実験結果より、Mrf1は、Sox9の転写共役因子として機能することが明らかとなった。 2.軟骨細胞分化に対するMrf1の役割 Mrf1を未分化間葉系細胞株に過剰発現させると、軟骨細胞への分化が促進された。また、Mrf1をマウス胎児軟骨器官培養系において過剰発現させると、II型コラーゲン陽性、X型コラーゲン陰性の軟骨細胞の分化が著しく促進された。一方、Mrf1の過剰発現は、Sox9の過剰発現と同様に、軟骨の後期分化を阻害した。したがって、Mrf1は、軟骨の初期分化を促進し、後期分化を抑制することが強く示唆された。さらにMrf1による軟骨細胞分化に対する作用は、Sox9と協調的に作用することが明らかとなった。 3.核ダイナミクスに対するMrf1の作用 Mrf1にVenusタグした遺伝子を過剰発現させると、細胞核においてスペックルを形成することが明らかとなった。またMrf1の過剰発現は、ユークロマチン形成を促進した。したがって、Mrf1は、クロマチンの動態制御に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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