研究概要 |
最近、概日リズム中枢である視交差上核だけでなく、肝臓など末梢組織においても時計遺伝子(Bmal, Per, Cry, Decなど)および様々な遺伝子が概日リズム発現することが明らかになってきた。一方、軟骨では細胞分裂、アグリカン合成、コラーゲン合成に概日リズムがあり、概日リズムが骨格成長に重要であることが報告されている。しかし、遺伝子レベルでの軟骨の概日リズムについての報告はこれまでない。そこで、6週齢雄SDラットを明暗条件下(LD)で2週間飼育後、LDあるいは恒暗(DD)条件下で連続48時間、4時間おきに屠殺して肋軟骨成長板を採取し、これらのRNAサンプルをGene Chip(Affymetrix)にかけ31,042のcDNAについて解析した。概日リズムの有無はLD, DD条件における各遺伝子のmRNAレベルでのコサインカーブとの一致率、LD、DDでのリズムの一致率に基づいて判定した。その結果概日リズムをもつ遺伝子が275遺伝子同定された。時計遺伝子であるBmal1、Per2、Dec2などのほか、転写因子、成長因子、細胞周期、細胞外基質、細胞内伝達などに関連した遺伝子が概日リズムを示した。また、成長板と肝臓に共通して発現しているリズム遺伝子を検討したところ、時計遺伝子を含めても概日リズム遺伝子全体の10%以下だった。よって、成長板では成長板独自の遺伝子が概日リズム発現していることが判明した。次に、軟骨特異遺伝子について検討したところ、軟骨マトリックスのアグリカンとII型コラーゲンの概日リズムは、コアタンパクの合成レベルのみならず、post-translationレベルでも制御されていることが示唆された。以上軟骨の発生、分化、成長に関わる多くの遺伝子に概日リズムが存在し、骨格成長に遺伝子の概日リズム発現が重要な役割を果たすことが示された。
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