研究課題/領域番号 |
17209063
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
浜川 裕之 愛媛大学, 大学院医学系研究科, 教授 (20127905)
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研究分担者 |
新谷 悟 昭和大学, 歯学部, 教授 (80294429)
中城 公一 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教授 (90314880)
住田 知樹 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (50314951)
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キーワード | 口腔癌 / 個別遺伝子診断 / 個別治療 / リンパ節転移診断 |
研究概要 |
近年、口腔再建技術の進歩により口腔癌の拡大切除が可能となっているが、進行口腔癌の治療成績の向上は認められていない。従来、口腔癌の治療法は病理組織診断と進行病期により決定されてきた。本研究では、口腔癌の治療法の決定に新たに遺伝子診断を加え、その結果に応じた個別治療を確立することにより、口腔癌の治療成績向上を目指している。頸部リンパ節転移の有無は手術術式を含む治療法の選択および予後を大きく左右する。そこで、われわれは生検材料を用いた頸部リンパ節転移遺伝子診断法の確立を試みた。ヒト全遺伝子型マイクロアレイを用いて、口腔扁平上皮癌リンパ節転移陽性および陰性症例各4例の原発腫瘍組織の全遺伝子発現量を定量した。転移陰性症例と比較して、陽性症例においてのみ共通して3'倍以上の発現亢進が認められる遺伝子38種類を頸部リンパ節転移診断マーカーとして同定した。さらに、口腔扁平上皮癌30症例を対象とした同マーカーによる頸部リンパ節転移診断の正診率は約70%であった。以上の結果より、生検材料を用いた遺伝子診断により頸部リンパ節転移の有無が診断可能であることが示唆された。 また、切除不能再発および遠隔転移症例に対してヒト全遺伝子対応型マイクロアレイとIngenuity Pathway Analysis(遺伝子ネットワーク/パスウェイ解析データベース)を用いて、各症例における治療標的分子および治療薬を迅速に同定している。実際に、口腔癌肺転移症例では、遺伝子診断にて治療標的分子としてHER2、治療薬としてハーセプチンが同定された。さらに、ハーセプテストでHER2蛋白質の強発現とFISH法にてHER2遺伝子の増幅が確認されたため、ハーセプチンを投与した。その結果、肺転移結節の増加および増大が抑制された。本来、ハーセプチンはHER2陽性乳癌に対する治療薬であるが、遺伝子診断は口腔癌へのハーセプチン適用の科学的根拠となった。以上の結果より、治療法を選択する上で従来の診断方法に加え、遺伝子診断が極めて有用であることが示された。
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