研究課題
本研究では、南部アフリカにおける近年の自然環境システムと人間活動の不安定な相互関係を諸分野から多面的に解明し、今後の両者のあり方について提示することを目的としていている。平成20年度の研究成果は以下の通りである。1.ナミブ砂漠、クイセブ川流域の水文環境の変化を検討するため、氾濫原堆積物の垂直変化を検討した結果、表層で堆積物の粗粒化が生じていることが明らかになった。このような最近の堆積物粗粒化と植生衰退の関係を検討するため、堆積物中に土壌水分ロガーを設置し、通年観測を行っている。2.海岸からエスカープメントに至る温湿度の季節変化及び日変化の特徴とクイセブ川流域における霧の発生状況との連関について解析を行い、更に客観解析データ及び海面水温データを用いて、それらの現象と総観規模の現象との関係を調べた。3.南部アフリカのバイオームの植生構造と降水パターンを、植物の生活型に着目して植生構造を把握したうえで、降水の季節変化との対応を検討した結果、多肉矮低木疎林、落葉低木疎林、多肉低木林、草原、サバンナの5タイプのバイオームが確認された。4.クイセブ川中流域の河成堆積物の堆積環境の調査の結果、20000年前を中心として数千年間の時間幅で、河成堆積物が堆積していることが判明し、当該地域における湿潤期の存在が推定された。5.グイ/ガナ(セントラル・カラハリ・ブッシュマン)の洗練されたナヴィゲーション技術と視力の関係について検討した。さらにグイ/ガナの相互行為を分析することで、環境の中に偏在する情報を有効に用いることができるのは、その鋭い知覚だけではなく、コミュニケーションを通じた相互理解によるところが大きいことが示唆された。
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African Study Monographs 34(印刷中)
Geographical Reports of Tokyo Metropolitan University 44(印刷中)
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