研究課題/領域番号 |
17251006
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
片山 剛 大阪大学, 文学研究科, 教授 (30145099)
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研究分担者 |
小林 茂 大阪大学, 文学研究科, 教授 (30087150)
稲田 清一 甲南大学, 文学部, 教授 (60221777)
田口 宏二朗 追手門学院大学, 文学部, 講師 (50362637)
林 淑美 名古屋商科大学, 総合経営学部, 講師 (50387651)
濱島 敦俊 (財)東洋文庫, 研究部, 研究員 (40012976)
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キーワード | 東洋史 / 地図学・地理学 / 土地調査 / 土地税 / 農村社会 / 技術移転 |
研究概要 |
初年度である今年度の重点課題は、主要資料たる1930年代広東省の土地調査冊につき、その作製経緯を明らかにし、これを通じてその性格づけを行い、本資料の活用如何を探ることである。7月に最初の資料調査を台北で実施し、一定数量の田畝調査冊を実見した結果、上記検討を進めるには他の関連資料を利用して作製経緯を探る必要を認識し、本調査冊の分析とともに、その作業も進めた。また台北だけでなく、広東での資料調査も実施し、本調査冊に関連する資料群を見出した。以上の作業を経て、今年度に得られた新知見は以下のとおりである。 1.本調査冊に添付されている、集落や農地の配置を示す地図を実見した結果、測量による実測を伴わない概略図であり、その意味で、本調査冊は土地調査事業全体の工程のうち、ごく初期段階に作製されたものと、まず推定した。2.次に関連資料を検討した結果、1930年代の広東省では、省の財政庁が進める、土地所有者の自己申告方式の、したがって測量を伴わない土地調査事業と、省の民政庁が進める、測量を伴う土地調査事業とが同時並行的に存在したことが判明した。3.そして、二つの調査事業を詳細に検討していくなかで、本調査冊は前者の事業の初期段階において作製されたものと断定した。4.ごく初期段階に作製された調査冊である点に鑑みて、本調査冊に記載されている各筆農地に関するデータをどう性格づけるか、すなわち信頼できるデータとあまり信頼できないデータとに腑分けすべきことが、次の課題として浮上してきた。5.近代中国の土地調査の方法・技術を見ていくと、日本で造語された和製漢語の測量用語が深く浸透している事実が大きくクローズアップされてくる。今後、東アジアにおける土地調査の方法・技術の移転・伝播という視角から分析していくことの必要性が高まると思われる。
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