研究課題/領域番号 |
17251006
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
片山 剛 大阪大学, 文学研究科, 教授 (30145099)
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研究分担者 |
小林 茂 大阪大学, 文学研究科, 教授 (30087150)
稲田 清一 甲南大学, 文学部, 教授 (60221777)
荒武 達朗 徳島大学, 総合科学部, 助教授 (60314829)
田口 宏二朗 追手門学院大学, 文学部, 講師 (50362637)
濱島 敦俊 (財)東洋文庫, 研究部, 研究員 (40012976)
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キーワード | 東洋史 / 地図学・地理学 / 土地調査 / 地形図・地籍図 / 技術移転 / 農村社会 / 開発史 |
研究概要 |
本年度の重点活動の第一は、2006年3月に南京市農村部を対象とする近代的地籍図(毎筆の土地に関する情報を記載した測量図)若干を発見したことをうけ、同一の時点・地域に関する一定量の地籍図を収集すること、第二は、収集した地籍図が対象とする南京市農村部の実地調査と南京での資料収集を実施することである。また第三は、本研究課題にかかわる国際ワークショップを開催することである。その結果得られた新知見と発見は以下である。 まず1947年の南京市農村部を対象とする、15平方キロを一円的にカバーする地籍図を発見できた。近代的地籍図は、日本では珍しいものではなく、それらを利用した研究も多数に登る。しかし中国の場合、従来、一定の地理的範囲をカバーした地籍図の存在は知られていない。その意味で本資料の発見は、それ自体が特筆すべき成果である。そして、収集した地籍図の初歩的分析を行ったうえで実施した南京での実地調査と資料調査では、地籍図の分析のみから想定される農村社会像や土地調査事業像を越えて、より掘り下げたレベルの農村社会像を浮かび上がらせ、また土地調査事業の現場レベルでの実態を再考する契機を得ることができた。具体的には、20世紀前半の南京という大都市の郊外で、「難民による無法ともいえる、荒々しい開発」が進行し、その過程で、一田両主制に比定できる土地をめぐる複雑な権利関係と、それを基礎とする農村社会が形成されていたことである。これは中国の開発史を再考するうえで極めて貴重な事例である。12月開催の国際ワークショップ「近代東アジア土地調査事業研究」は、国内外を問わず、本テーマに関する最初の研究集会であったが、充実した議論がかわされ、本課題の研究手法、特に地籍図を利用した研究成果に対しては、本課題メンバー以外の参加者から、その斬新さが高い評価を得た。以上の成果の詳細はニューズレター第2号に掲載する。
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