成果の内容:1.今帰仁タイプおよびビロースクタイプ磁器を対象に、消費地においては所属時期を、生産地においては生産窯を特定して、これらの流通状況を具体的に把握した。この内容は報告書の田中克子・宮城弘樹・新里亮人・金武正紀の報告に示されている。 2.13〜14世紀の琉球列島の背景をなす東アジアの歴史状況をあわせて検討した。この内容は成果報告書の森本朝子・大田由紀夫・伊藤正彦の報告に示されている。 3.2008年5月16日(金)、熊本大学文学部において講演会・研究会を開催した。講演1:楊〓(福建博物院院長)「福建省における漢代の〓越考古学-崇安漢城を中心に-」講演2:栗建安(福建博物院文物考古研究所所長)「福建省の古代窯業-宋・元代を中心に-」。参加者は熊本大学の学生を中心に50名。 4.福建博物院において遺物の実測などを実施した(9月)。これによって必要な遺物はほぼ資料化することができた。図面は報告書で公表した。 5.報告書を作成した。(2009年3月刊行) 成果の意義:13世紀後半から14世紀初頭において沖縄と先島地域が〓江流域の陶磁器窯と福州港にかかわっていたことが明らかになった。今回の結論は、沖縄諸島と中国とのかかわりが14世紀前半にあるとする従来の時期的認識にたいし、考古学的に再検討を迫るものである。しかし今回の成果は背後に存在したであろう事実関係のほんの一部を指摘したにすぎない。今回の成果が歴史的にどのような意味をもつのかについて、今後琉球王国形成の要因を研究する中で、多方面からの検討が続けられなければならないだろう。
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