研究課題
本年度の研究活動は「中華」あるいは「中国」という視点をいれた資料収集並びに分析を行い、また「日本」認識の台湾における偏差をより明確化することを目指した。主たる研究活動と成果は以下のようである。1.植民地統治期の記憶、戦後の「日本」認識について、「中華」を視野にいれた聞き取り調査を、台北・宜蘭・台南地域で行った。男女による差異を、公的世界と私的世界の両面から考察すべきことが明確となった。2.台湾における「中華」認識に関して、名称上の「中華」・「中国」を「台湾」に変える「正名運動」について、本省人・外省人・原住民に対して聞き取りを行うなど、資料収集を行った。また、故宮博物院などの博物館の展示や文化行政に関する資料収集・分析を行った。これによって戦後の政治情勢の変化に伴い、「中華」・「日本」の表現も変わっていくことを指摘し得た。3.台湾における「日本」認識を、台湾に在住していた日本人との交流から考えるべく、東部地域の漁民に対する調査を行った。また、この問題に関連して、植民地期に台湾に在住していた日本人についても、資料収集を行った。4.植民地期の学者兼官僚が行った学問的調査と植民地政策策定との関係について、文献収集を行った。5.「日本」認識の多様性に関して、植民地統治期の原住民の文化的変容について、苗栗・台東での聞き取り調査と文献収集を行った。また、「客家」の文化的アイデンティティと「日本」認識について、台北・新竹で聞き取り調査を行っている。6.台湾における「日本」認識をより多角的に考察するため、研究会に外部講師を招き、メラネシアのポストコロニアリズムとの比較、東南アジアと台湾の人的交流、八重山と台湾との密接な関係などについて討議を行い、台湾の植民地主義の独自性への認識を深化させた。
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東洋大学アジア文化研究所研究年報 42
ページ: 97-108
南瀛的歴史、社会與文化編輯委員会編『南瀛的歴史、社会與文化』 (印刷中)
Proceedings of "A Preliminary Study on Transnational Communities in Asian Peripheries: Perspectives from Comparative Area Studies, " edited by Matsumoto Seiichi and Nagatsu Kazufumi, Asian Cultures Research Institute, Toyo University,
ページ: 51-56
内なる他者=周辺民族の自己認識の中の「中国」(東北大学東北アジア研究センター設立十周年記念シンポジウム・地域研究コンソーシアム連携シンポジウム論文集 (印刷中)
崔吉城・原田環編『植民地の朝鮮と台湾-歴史・文化人類学的考察-』
ページ: 287-330
広島県立大学論集 11-1
ページ: 61-72
高一生(矢多一生)研究 7
ページ: 10-16
Ship & Ocean Newsletter 175
ページ: 6-7