研究課題/領域番号 |
17251016
|
研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
川田 順造 神奈川大学, 日本常民文化研究所, 客員研究員 (50107835)
|
研究分担者 |
鈴木 裕之 国土舘大学, 法学部, 教授 (20276447)
鶴田 格 近畿大学, 農学部, 准教授 (60340767)
分藤 大翼 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 研修員 (70397579)
|
キーワード | 音文化 / 無形文化財 / 地域社会 / 近代化 / 植民地時代 / 独立後 / 意識の変化 / 継承の未来 |
研究概要 |
無形文化財は、生きた人間によって継承される点が、有形文化財と根本的に異なる。アフリカは、音文化の領域で豊かな無形文化財をもっているが、それを支えて来たのは地域社会だ。この研究計画は、それぞれ長年の研究を踏まえた現地調査による第一次資料に基づいて、地域社会がどのように無形文化遺産としての音文化を支えてきたかを明らかにし、未来への継承の問題点を考えるものである。川田は、旧モシ王国(ブルキナファソ)の王朝史を伝える太鼓言葉を支えてきた地域社会と伝承者である楽師の現状を、2つの王朝とそれぞれの地域社会について比較し、共和国の首都としての「近代化」と住民の意識の変化が激しいワガドゥグーの王朝で、継承が危機的状況にあることを指摘し、対策を提案している。鈴木はギニアの世襲の語り歌い手である「グリオ」が、地域社会のフランス植民地時代から社会主義政権、自由化の時代への、「近代化」の過程でどのように変容してきたかを、あるグリオー族の変化を克明に追うことによって明らかにした。鶴田は、東アフリカのスワヒリ社会、とくにタンザニアの都市における移民集団の女性ダンス結社変化に注目し、成女式や結婚式など通過儀礼との結びつき、故郷の歌の取りこみ、収入をもたらす意義などが、この結社による無形文化財としてのダンスの継承・発展を可能にしたことを明らかにしている。分藤は、中部アフリカ・カメルーンのバカ・ピグミー社会における、歌と踊りを伴う異なるタイプの儀礼が、どのような頻度と参加者によって実践されているかを、外部者の浸透がきわめて難しいこの社会での、克明な参与観察によって明らかにした。このように本研究では調査者すべてが、長年親しんできた地域社会での詳細な調査に基づく成果を提示していることが大きな特色である。
|