研究課題/領域番号 |
17252008
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
宮島 喬 法政大学, 社会学研究科, 教授 (60011300)
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研究分担者 |
佐久間 孝正 立教大学, 社会学部, 教授 (80004117)
郭 洋春 立教大学, 経済学部, 教授 (00233669)
大橋 健一 立教大学, 観光学部, 教授 (70269281)
坪谷 美欧子 横浜市立大学, 国際総合科学部, 準教授 (80363795)
小川 有美 立教大学, 法学部, 教授 (70241932)
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キーワード | 人権 / 人の移動 / EU / 東アジア / ESOL / 家事労働者 / 中国 / フィリピン |
研究概要 |
本年度は、EU諸国と東アジア諸国の各国内における移民の送出と受け入れ・統合の仕組みと現状を詳細に把握することに主目的を置いた。その結果、次の諸点が明らかとなった。 EUの下では、フランスの2005年10〜11月のパリ市郊外の「暴動」が意味するように、定住移民の地位の改善と市民化の必要が認識されているにも拘わらず、第二世代を中心に高失業、社会的排除が問題化している。帰化など国籍の取得が進み、市民権が享受されていても、移民青年たちの貧困、社会的不安定は必ずしも改善されていない。第二世代の学校教育、職業教育の強化によるエンパワーメント、人種差別禁止の啓発が各国で課題となっている。 従来、帰化など国籍取得に比較的寛大な国が多かったが、イギリス、オランダなど帰化の条件を厳しくする国が増えている。たとえばイギリスは、居住要件のほか語学試験(ESOL)と英国生活事情試験を課し、これに合格することを帰化の条件としている。英市民となる上で英語力や社会的知識は重要であるが、同化主義の強まりという懸念も否定できない。 東アジア諸国については、(1)ラオス、カンボジァ、ミャンマー等からタイへの労働移動が増加し、タイ社会の多民族化が促進され、そのアイデンティティにも影響を及ぼしていること、(2)中国では、農村→都市の労働移動がいっそう増加するなかで、農民の側から「人間としての尊厳」「平等」を求める要求が出始めていること、(4)フィリピンでは、海外出稼ぎ家事労働者の人権問題をきっかけに、はるかに低賃金で劣悪な条件の国内の家事労働者との連帯の動きが起こっていること、等々が明らかされた。中国の場合、移動者の人権と平等の実現のためのNGOの活動が発展できるかどうか、フィリピンの場合、女性家事労働者の受け入れ先であるシンガポールや香港のNGO等との連携がどのように行なわれうるか、がそれぞれ将来にっながる重要な要素といえる。
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