研究概要 |
タイ南部に位置するソンクラー湖では水質の悪化が問題となっている.同湖では養殖規模に関する規制も行われず,過密養殖が原因と考えられる養殖魚の斃死が頻発している.このため,同水域における水理・水質変動機構を明らかにすることを目的として現地調査を実施した.ソンクラー湖はタイ南部に位置する海跡湖であり,長さ3kmほどの水路によりタイ湾につながる汽水湖である.その面積は1,082km^2で琵琶湖の1.6倍ほどであるが,水深は平均で1.5〜2.0mときわめて浅い.この水域の養殖対象魚種はスズキ(sea-bass)である.調査は2005年10月に実施された.メモリー内蔵型の塩分計,DO計および電磁流速計を設置し,10分間隔でデータを取得した.なお,センサーは水表面からほぼ50cmの箇所に固定した.いけすの網には生物幕が付着し,これによりいけす内の水が滞留し,水質が悪化しやすいものと推測された.このため,いけすの内外で計測を行った.また,現地において1時間毎に多項目水質計により,各種水質項目の鉛直分布を測定した.観測を行った桟橋沿いの水深はほぼ1m〜2mである.さらに,30分毎の水位変動を目視により計測した.また,潮汐変動に伴う湖内の流動をより詳細に把握するために,数値計算を実施した.計算においては曲線座標系を使用し,これを差分法により解いた. いけすでの多項目水質計による観測結果によれば,いけすの内外で水質項目はほぼ同じ値を示している.当初,養殖魚による酸素消費によるいけす内でのDO低下を予想したが,そのような現象は見られない.また,溶存酸素は鉛直方向にほぼ一様な分布をしており,一様な水質特性を有する水塊が移流されて来ることを示唆している.数値計算の結果,このような水質変動は潮汐の入退潮と魚による酸素消費によるものであることが分かった.
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