研究概要 |
平成20年度は、全ルートを対象に補充調査を実施した。とくに12月の調査では、雨季による悪路で踏査できなかったDルートのプリアカン・コンポンスヴァイ以東をさらに進み、補充調査をおこなった。前年度に引き続き未踏査の王道所在確認とその実態の調査と沿道上に点在する確認遺構の本格的な実測を含む建築、歴史、考古学的調査を実施した。王都アンコールを起点に広がる王道沿いに建設された宿駅、橋梁、寺院、施療院などは、中央と地方との建築技術に格差があることも明らかにかになり、各遺構の年代特定や技術的な解明を進めている。また、王道の末端に位置する大規模な都城址寺院も含め、王道建設に伴う重要な遺構(大規模な橋梁や保存状態の良い宿駅、施療院など)についても、実測をおこなってきたが、さらに詳細な総合調査をおこなう予定である。 これまでの調査研究の,成果をもとにして、平成20年10月にはカンボジア(1名)及びフランス(2名)から研究者を招き、研究分担者の参加により日本大学において、『密林に隠されたアンコール王国のライフライン』をテーマとして、国際シンポジウムを開催し、研究成果を発表した。 また、3月にはラオスにおいても王道の所在確認や沿道遺構の調査を実施した。今後は、カンボジア国内からさらにラオス、タイへのクメール建築文化の影響と王道のネットワークとそれらの地域の遺構の実態把握と王道が果たした機能の把握が今後、重要と考えている。同時に、発見した諸遺構の詳細な総合調査として、王道およびこれまで所在が明らかとなった沿道に確認された鉄、窯に関する工房の考古発掘調査もあわせて進める予定である。
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