研究概要 |
平成17年7月より平成18年3月にかけて,オーストラリア・ノーザンテリトリー準州ダーウィンにおいてハイガシラゴウシュウマルハシの共同繁殖に関する野外研究を行った.今年度は4年間の研究期間の初年度に当たるが,昨年度まで3年間継続した関連研究の実績を継承しており,研究対象種の社会構成、繁殖生態、行動生態に関するデータ、および性判定、遺伝解析のための血液標本の収集および採取を行った。CHD遺伝子を用いた性判定は立教大学および国立科学博物館で行い、マイクロサテライトを用いた血縁判定は九州大学で行った。 7月〜12月の繁殖期間に全19グループ80個体(標識個体67個体:標識率83%)を確認した。グループサイズは2個体〜9個体で、17グループでは繁殖つがいに1〜7個体のヘルパーが付随していた。個体の群れ間移動が6例(オス3例、メス5例)見られた。10グループについては、ビデオ撮影によって、グループ構成員の繁殖行動を観察し、各個体の繁殖への貢献度に関するデータを収集した。全19グループ中5グループで、1〜2個体のヒナが巣立ちに成功したが、全体的に繁殖成功が低く,ヘルパーのいないグループでは繁殖活動が見られなかった。 今年度は環境条件が悪化し,対象種を含めて多くの鳥類で,繁殖開始が極端に遅れる,繁殖成功が低下するなどの現象が観察された.本種では,ヘルパーの数が多いほど繁殖に成功する確率が高かったが,本種では環境条件が悪いときに協同繁殖の機能が高まることが明らかになった。 性判定は成鳥,ヒナについて行い,親による性比調節を示唆する結果が得られている. 繁殖グループ内での個体間関係など社会構造に関するデータも蓄積できている.マイクロサテライトによる血縁解析においては,プライマーの設計が終了して,現在解析を進めている. なお,本研究の成果は,日本鳥学会大会,日本生態学会大会,国際鳥類学会議において,発表および発表予定である.
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