研究概要 |
平成18年7月より12月にかけて,オーストラリア・ノーザンテリトリー準州ダーウィンにおいてハイガシラゴウシュウマルハシの協同繁殖に関する野外研究を行った.今年度は4年間の研究期間の第2年度に当たるが,昨年度まで4年間継続した関連研究の実績を継承し,研究対象種の社会構成、繁殖生態、行動生態に関するデータ、および性判定、遺伝解析のための血液標本の収集および採取を行った。採取した血液標本については,CHD遺伝子を用いた性判定を立教大学および国立科学博物館で行い、マイクロサテライトを用いた血縁解析を九州大学で行った。 調査期間中19グループを確認し,観察データを得た。グループサイズは1個体〜7個体で、15グループでは繁殖つがいに1〜5個体のヘルパーが付随していた。14グループについては、ビデオ撮影によって、グループ構成員の繁殖行動を観察記録し、各個体の繁殖への貢献度に関するデータを収集した。全19グループ中4グループで、1〜2個体のヒナが巣立ちに成功したが、例年に比べて全体的に繁殖成功が低く,特にヘルパーのいないグループでは繁殖成功が低かった。 今年度はオーストラリア全域において記録的な干ばつで,調査地域でもその影響で野火が頻発した.野火については,繁殖への影響,群れなわばりの利用パターンおよびなわばり防衛や採餌における協同行動への影響に関しても研究を行った. 性判定は成鳥,ヒナについて行い,親による性比調節を示唆する結果が得られている.これまでに採取した血液標本についてマイクロサテライトによる血縁解析を行い,各グループにおける繁殖個体を特定し,親子関係を確認した.本種では,ヘルパーの存在は繁殖成功を高めるが,ヘルパーの貢献度は繁殖個体に比べると低いことがわかった. なお,本研究の成果は,日本鳥学会大会,日本生態学会大会,オーストラリア鳥類学会において,発表および発表予定である.
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