研究分担者 |
伊谷 原一 林原生物化学研究所, 類人猿研究センター, 所長 (70396224)
五百部 裕 杉山女学園大学, 人間係学部, 教授 (20252413)
中務 真人 京都大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (00227828)
橋本 千絵 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (40379011)
小川 秀司 中京大学, 国際教養学部, 教授 (80293976)
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研究概要 |
この研究は,ウガンダ共和国カリンズ森林に生息するチンパンジーについて,季節による食物分布の変化と遊動や採食行動の変化の関係に関する詳細なデータを収集するとともに,他の異なる環境に生息するPan嘱について比較データを集め,Pan属の生息地全体に適用できるモデルを作ることを目的としている。本年度は,カリンズ森林のほかタンザニアのウガラ地区,コンゴ民主共和国のルオー保護区等でデータの収集を行った。また,カリンズ森林でこれまでに収集したデータの分析を行い,利用可能な果実量がチンパンジーの遊動に与える影響についての従来の生態学的モデルはある程度成立するものの,多くのチンパンジーが集まったときには,採食効率の低下にもかかわらず長時間同じ果実授に滞在し続けるなど,生態学的要因以外の要因が遊動パターンに大きな影響を及ぼしていることを明らかにした。また,ルオー保護区のボノボについても果実量と遊動パターンについての分析を進め,ここでも果実量と遊動パターンの関係についての生態学的モデルはある程度成立するものの,それらの季節変化はごく小さく,もっとも遊動速度が大きくなる季節でも,メスに遊動・採食上の不利益をもたらすほどではないことがわかった。 本研究のもう一つの目的である初期人類の生息環境と勘刀属の生息環境の比較研究では,これまでに得られた初期人類の生息環境についての知見と,Pan属の環境適応についての予備的分析をもとにして,この研究でPan属と初期人類の生態的適応についてどういう点を明らかにできるのか,また最終年度を迎えるにあたってどういう追加調査が必要なのかを検討した。最終年度には,このテーマによるワークショップと,その成果を公表するためのシンポジウムを開催することになり,それに向けた準備も行った。
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