研究概要 |
代表的な成果について概説する。1) エキノコックス条虫関係の成果 : 地球規模でのエキノコックス条虫の遺伝子多型についてミトコンドリア伝子解析を行い、a) 北半球に分布している多包条虫(E. multilocularis)は3系統の遺伝子系に大別できることを報告した(Nakao et.al. submitted)、b) 中国大陸における3種類(E. granulosus, E. Multilocularis, E. shiquicus)のうち遺伝子多型が認められるのはE. shiquicusだけであること、他の2種は小さな集団として中国国内で分布域を拡大したと考えられた(Li et.al. Trans R Soc Trop Med Hyg 2008, 102 ; Nakao et.al. in prep.)、さらにc) ペルー、ヨーロッパにおける単包条虫のミトコンドリアならびに核遺伝子を解析し、これまでG1と呼ばれている単包条虫集団内での遺伝子多型は非常に限定されていることが判明した(Snabel et.al. Parasitol Res 2009, in press ; Pedro et.al. 2009, Parasltol Int in press)。またd) これまで症例の確認ができていなかったモンゴル、イランの多包虫症症例を確認できた(Ito et.al. in prep他)。2) テニア条虫関係の成果 : e) 新しい簡便な遺伝子解析法を開発し(Nkouawa et.al. J Clin Microbiol 2009, 47)、アジア各国の患者糞便を用いる解析を実施している。f) タイで入手したテニア条虫2個体のミトコンドリアならびに核遺伝子の解析から、雑種個体と結論付けられた(Okamoto et.al. in prep.)。g) インドネシアにおける嚢虫症患者の病巣を用いる遺伝子解析結果からイリアンジャヤを含む他のアジア地域と遺伝子型が異なることが示唆された(Sudewi et.al. Trans R Soc Trop Med Hyg 2008, 102)。3) 裂頭条虫に関する成果 : 日本海裂頭条虫(Dipphylobothrium nihonkaiense)とヒグマ裂頭条虫(D. ursi)との分類学的考察を加えた(Yanagida et.al.in prep.)。すべての寄生虫種において地球規模での解析が必要かつ可能であることが判明してきた。
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