研究課題
20世紀後半に突如人間社会に出現したHIVは一体何処から始まり、どのように世界に蔓延したのだろうか。HIV感染症の将来の姿はどうなるのであろうか。これらの疑問に答えることを目的として、我々はHIVの起源地と推定される中央アフリカ地域で同ウイルスの過去と未来を探る研究を行っている。4年計画の第3年度である平成19年度は、コンゴ民主・コンゴの2ヶ国で調査を行った。コンゴ民主では、これまで十数年以上に及ぶ周辺諸国との紛争や内戦のため分子疫学的データが全く得られなかった同国東部のルワンダ国境地帯に初めて足を踏み入れ、エイズ患者82名より検体を採取した。スクリーニングテストの結果、1例を除きいずれも高いPA抗体価を示すものであった。また首都キンシャサ郊外では様々なサル種12頭より検体を得た。この内ゴールデンマンガベイ2頭がPAテストにおいて弱い反応を示したので現在確認中である。コンゴでは、従来未調査であった同国赤道直下のジャングル地帯にある病院において、主にエイズ患者より61検体を収集した。また大西洋岸の町ポイント・ノアールの病院では、29名の患者より検体を採取した。この病院では外来患者個人との連絡体制が確立しており、いわゆるコホート研究が可能である。今回得られた検体は、昨年あるいは2年前に検体が得られている同一患者からの再採取である。ウイルスが個体内でどのように変化してゆくか追跡をすることにより将来予測にとって重要な基本データが得られるものと期待され、遺伝子解析が進行中である。なお平成17年度に収集したコンゴの検体59株について、pol領域とenvV3領域の解析が終了した。AやGを中心として多様なサブタイプが混在していたが、特にその中の1株はpol配列に基づく系統樹上の位置が極めて他株とかけ離れており、グループOやNとも異なる新しい型のウイルスの存在が示唆された。
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Microbes Infection 9(4)
ページ: 475-482
HIV & AIDS Review (in press 掲載確定)
Microbes Infection (in press 掲載確定)
http://www.virus.kyoto-u.ac.jp/Lab/fukuseikiban.html