研究課題
これまで紛争や内戦などのために全く調査がされたことがないコンゴ民主東部の町ブカヴにおいて、80名のエイズ患者より検体が前年に採取されていた。この内78検体が血清学的にHIV陽性と判定され、pol領域におけるPCRと遺伝子解析を行なった。その結果、最も多かったのはサブタイプAで44(56.4%)で、次いでCが15(19.2%)、FとGが各々4(5.1%)と続いた。既知のサブタイプに分類されない株も11(14.1%)あり、当該地域におけるHIV-1の遺伝子型の多様性が極めて高いことが判った。Cが2番目に多かったことは、隣国のルワンダやタンザニアからの人の流入による影響と考えられるが、Gが思いの外少なかった。Gは同国西方に位置するコンゴ共和国ではより多数存在することから、A/Gリコンビナントが生まれた場所は東部ではなく中央部から西部の何処かではなかろうかと推定された。そうした疑問を解明することも視野に入れ、平成20年度はコンゴ盆地中心の町キサンガニからの検体収集を目指し、臨床症状からエイズが疑われた100人の患者より検体を得た。スクリーニングの結果、HIV陽性は91検体で陰性が9例。これらの遺伝子解析が進行中である。コンゴ共和国については、今回熱帯ジャングルに覆われた赤道直下の最奥地ウェストキュヴェット州に初めて足を踏み入れ、エイズに関する疫学調査を行なった。病院の外来患者49名の内HIV陽性は4名(8.2%)。これらが都市から持ち込まれたものか、この地域に古くから存在していたものか、遺伝子解析の結果が注目される。また大西洋岸の町ポイント・ノアールの病院からは、新たに42検体が得られた。これらの一部は、過去3年間に検体が得られている同一患者からの再採取である。エイズウイルスが患者の身体の中でどのように変異したのかという個体内進化の重要なデータが得られるものと期待される。
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Plos ONE 3
ページ: 1-8
Amer. J. Human Genetics 83
ページ: 445-456
http://www.virus.kyoto-u.ac.jp/Lab/fukuseikiban.html