研究概要 |
平成18年度は,交付申請書のA)〜C)に対応して以下の成果を得た. A)ハードウェアアルゴリズム記述言語ARITHの実用バージョンを開発した.この実用バージョンでは,各種の数系(非2進数系を含む)を用いた高速加算器,加算器ネットワーク,乗算器,積和演算器およびそれらの複合データパスの記述と検証を可能である.また,処理系のテストを行うとともに,検証の実行時間を評価した. B)2値論理回路(電圧モードCMOS)と多値論理回路(電流モードCMOS)のスタンダードセルライブラリを用いて,両者が混在したテスト回路を設計し,これを自動配置配線するとともに,生成されたレイアウトからのパラメータ抽出を行った.それらをHSPICE等の回路シミュレータを用いて動1作検証するとともに,2値論理・多値論理の混載回路におけるノイズの影響について検討した. C)初年度に検討した単電子トランジスタ(SET)による2値・多値融合論理の基本ゲートとSETICMOS混載回路シミュレータを利用して,比較的大規模な応用システムLSIの設計を試みた.具体的には,単電子連想メモリ(CAM)の設計を行った.また,分子デバイス(人工触媒素子)に基づく無配線ナノエレクトロニクスの可能性についても並行して検討した.本研究で提案する人工触媒素子は,溶液中の特定の反応を選択的に触媒し,その触媒活性は特定のエフェクターに依存して変化する.このような活性制御可能な触媒をトランジスタとして用いることにより,現在の半導体集積回路と質的に同等の回路機能を実現可能である.今回の計画では,人工触媒素子をマイクロ電極デバイスによって実現する方式を検討した.可逆なレドックス分子(キノン/ヒドロキノン等)を情報担体として,その生成・消滅をチップ上に集積化された多数のマイクロ電極(Pt)で制御することにより,目的に応じた反応拡散場をチップ上の微量溶液中に人工的に形成できることを確認した.
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