研究概要 |
本研究では,過密かっ高速で流れる交通流において発生する交通事故を,防止するためのセンシングと情報提供技術の開発を目的としている。昨年度までの研究で,いわゆる臨界流においては,ちよっとしたブレーキング等により疎密境界が発生し,疎密が増幅されながら遡上するという現象が,高速道路における事故要因の多くを占めていることが分かった。そこで,今年度は,疎密波を画像センサーや超音波センサーといった実際に高速道路に設置されている異種センサーのデータを融合することにより,疎密波を早期に検知し,伝播を詳細に予測した結果をドライバーへ情報提供するための技術を開発した。 疎密波の状態を,センサーが設置された各地点の各時刻という時空間格子点上に定義し,各格子点の状態を速度と交通密度でモデル化した。状態遷移には,過去の時間方向に隣接する時空間格子点と対象格子点の状態を変数とする重回帰分析によりモデル化し,約半年分の交通データを用いて重回帰係数を学習した。別のテストデータを用いた実験から,本モデルにより,疎密波伝播につき十分な予測精度が得られることが得られることが確認された。 一方,疎密波検知には,未検出や誤検出の問題が存在する。本研究では,未検知や誤検知がドライバーへ与える影響を検証するため,ドライビングシミュレータ実験を行った。一般に未検知と誤検知は反比例の関係にあるが,ドライバーの感性にあうようにセンサーの感度を調整する必要がある。被験者には,近となる性別や年齢にわたって均等に分布した40名を選別し,センサーの精度とドライバーの感性との相関につき,有意義なデータを取得することができた。
|