研究概要 |
本研究では,遺伝的アルゴリズム(GA)や遺伝的プログラミング(GP)に代表される従来の進化的計算法では扱うことができなかった,数値付き木構造,ネットワーク構造,グラフ構造のような複雑な構造を最適化することができる新しい進化的計算法を開発し,画像処理に応用することを目的として研究を遂行した. 数値付き木構造の進化的最適化法としてGMA (Genetic Matrix Algorithm)を開発した.GMAでは,2次元の行列状の染色体によって各節点に数値パラメータが付随する木構造を記述し,交叉および遺伝操作によってランダムな構造から目的に適した構造を自動生成することができる.例えばガンマ補正など,数値パラメータを必要とする画像フィルタを木構造状に配置することによる画像処理アルゴリズムの自動生成にGMAを適用してその有効性を確認した. 一方,ネットワーク構造・グラフ構造に対しては,GIN (Genetic Image Network)を開発した.GINでは,画像フィルタをネットワーク状に組み合わせ,画像をネットワーク中に流し,適切な時期に取り出すことによって複雑な画像処理を簡潔に記述することができる.例えば2箇所から取り出すことで,1枚の画像に対して異なる処理を同時に実現することができる.また,動画像処理の自動生成に非常に有効であることを確認した. 本研究では,GINを動画像処理,特にITSやセキュリティ画像処理に応用することで,一般に構築に膨大な労力と時間が必要とされる動画像処理の構築プロセスを画期的に短縮することができることを証明した.以上のように,本研究は,従来は最適化することができなかった複雑な構造を進化的に最適化するための基礎手法を開発するとともに,画像処理に適用して有効性を示したものであり,工学的価値があるだけでなく,産業応用も大いに期待される.
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