研究概要 |
本研究では,インダクション(帰納推論)やアブダクションなどの仮説発見のための手続きであるCF帰納法,およびこれを実現するための結論発見手続きであるSOL導出/SOLARをさらに高度なものとし,効率的な実現を行い,科学分野での応用を目指す.CF帰納法は,SOL導出を利用し逆融合法により仮説を構築するもので,一階述語論理における仮説発見に関して理論的には健全かつ完全であるが,効率的実現に向けては解決すべき課題が多いため本研究において検討する.本研究の研究期間は三年間であり,2年目にあたる本年度は以下の項目について検討した. 1.仮説発見に関する基礎理論の構築(岩沼). 本年度は,点別極小限定に基づく帰納推論について研究し,幾つかの結果を得た.また階層構造マイニングの基礎となる緩和法に基づく高速系列データマイニング法を開発した.次年度以降,CF帰納法との関連性の解明,および生化学におけるパスウェイ推欝化学反応式における酵素反応の推定などのバイオ応用を行う予定である. 2.仮説発見のための高速アルゴリズム(鍋島). 本年度は,結論発見システムSOLARにおいて等号を公理中に含む等式理論を効率よく処理するために,等式処理のための効率的手法の1つであるbasic superposition法の実装を行った.ただし,SOLARのようなトップダウンに推論を行う処理系にbasic superposition法を効率的に実装することは難しく,現在の実装はそのプロトタイプである.評価実験の結果,いくつかの間題において推論数が減少し,処理時間を短縮できることを確認した.しかし,現在の実装はまだ非効率な面があること,健全であるが不完全な実装になっていることなどの問題があるため,今後,この改善に取り組む予定である. 3.CF帰納法の理論整備と仮説発見の応用システムの構築(井上). CF帰納法を実現する際には,SOL導出で得られた多くの結論集合から必要な帰結を選定し,この帰結の否定を一般化するためのアルゴリズム(逆例化,節からのリテラル削除,最小汎化,逆導出,逆包摂など)が必要になる.このうち一般化アルゴリズムの適用戦略について考察した.また,SOLARおよびCF帰納法を用いて,生化学におけるパスウェイ推定に関するバイオ応用実験を行った.これらの研究は引き続いて平成19年度も続ける予定である.
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