研究概要 |
本研究では,インダクション(帰納推論)やアブダクションなどの仮説発見のための手続きであるCF帰納法,およびこれを実現するための結論発見手続きであるSOL導出/SOLARをさらに高度なものとし,効率的な実現を行い,科学分野での応用を目指す.CF帰納法は,SOL導出を利用し逆融合法により仮説を構築するもので,一階述語論理における仮説発見に関して理論的には健全かつ完全であるが,効率的実現に向けては解決すべき課題が多いため本研究において検討する.本研究の研究期間は三年間であり,最終年度にあたる平成20年度は以下の項目について検討した. 1.仮説発見に関する基礎理論の構築(岩沼・井上) 結論発見プログラムSOLARへ効率的な等号推論を組込むために,弱順序制約付きModification法の改良を試みた.等式の対称変換規則が極めて非効率的であることを発見しより効率的な等号推論体系を新たに提案した.また,記述的帰納推論の機械推論の開発を目的として,極小限定に基づく記述的帰納推論体系を考察し理論的性質を明確にし,点別極小限定に基づく一階論理の枠組みでの近似手法を開発し結論発見技術に基づく機械推論法を提案した. また,SOLARにおいて不安定な生成領域を扱うための変換手法を開発しあらゆる生成領域の使用を可能とした. 2.仮説発見のための高速アルゴリズム(鍋島) 結論発見システムSOLARの効率化のために,結論制限長を徐々に伸長していくことで短い結論を優先的に発見する探索戦略の考案と実装や,すでに導出した結論に包摂されるような冗長な結論の生成を抑制する新しい枝刈り手法Skip-minimalityの考案と実装,不安定な生成領域を安定なものに自動変換する手法の実装を行った.これらの改善によりシステムの実用性を大きく高めることができた.また,C++言語による次期SOLARシステムの試作を行った. 3.CF帰納法の理論整備と仮説発見の応用システムの構築(井上) SOLARおよびCF帰納法を用いて,生化学におけるパスウェイ推定に関するバイオ応用実験を行い,アブダクションとインダクションを融合した仮説の生成を可能とした.
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