研究概要 |
本年度は循環器系モデル,姿勢制御モデル,全身の運動制御モデルについて重点的に開発を行った.循環器系モデルでは筋骨格系運動と循環器系動態との連携をより妥当なものにするため,筋活動に伴う筋内血流増幅作用(筋ポンプ)のメカニズムを新たに追加した.このモデルを用いることにより,運動生成シミュレーションにおける血圧変動の様子がより実測のものに近づけることが可能となった.また計測結果との誤差を最小化するようにモデルのパラメータを修正する同定法も新たに追加し,より妥当なシミュレーション結果を実現することが可能となった.姿勢制御モデルに関しては仮定に基づく数理モデルの構築よりも実験による生体特性の検証に重点を置いた.具体的には重心位置のトラッキング動作における腰部の運動の位相分析や姿勢制御と精神活動状態との関係を実験的に分析した.全身運動制御モデルについては,立位からの持ち上げ作業,座位でのスライド動作,自動車のハンドルステアリング動作の運動生成にそれぞれ成功した.これらのモデルでは運動の意図を仮想的なカとして表現し,数少ない条件設定で,全身の運動を生成できることが特徴となっている.また,手先からの反力など運動学的条件だけでなく,力学的な特性も表現できるようにモデルを構築した.ただし,まだ立位でのバランス維持に難点があり,この改善が今後の課題として残った.本予算で本年度は並列計算用のクラスタマシンを購入し,上記の全身運動制御モデルのシミュレーションに活用した.従来マシンの2倍以上の性能が出ており,概ね満足のいく計算機環境が整った.ただし,シミュレーションモデルのほうも予想以上に複雑化しており,計算コストとのバランスも考慮する必要がある.
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