研究概要 |
今年度は,ヒューマンエラーに起因する事故の発生を回避することを目的とした「予測推論器」提案のための要素技術としてまず,模擬生産ライン上を動く自動車ボディーの中に,SAを用いて2個のモジュールシートを搭載する模擬作業システムを構築した.このシステムでは,模擬搭載作業の際に,ボディーのフロントサイドフレームと作業者の左腕のひじが衝突する可能性があることが判明した.そこで,衝突可能性のあるフレーム側の位置をハザードポイント(HP)と定義し,HPへのひじの接近をモニタすべく,加速度センサおよびジャイロスコープを適用した「ひじ軌跡検出器」を開発した.しかし,ひじ軌跡検出器の作業システムへの搭載はまだ完成していないため,HPを中心にした半径25cmの球の中に入るひじの位置のモニタに対応させて,ボディフレームへのモジュールシート突起部の接近をモニタ対象とすることにした.そして,隠れマルコフモデル(HMM)により,この空間に侵入する14個ずつの危険軌跡と安全軌跡を学習させ,さらに実際の作業に伴って変化するシート突起部の軌跡が危険HMMに基づくデータであるとする尤度が99.0%以上の場合に,beep信号を発生する予測推論器を構築し,その動作を実験的に確認した.さらに,本研究の予測推論器としての適用される階層HMM手法について問題を整理し,解説記事として投稿した(18年度掲載).最後に,テキストマイニングに関してはコーディングと呼ばれる前処理を行うプログラムをRuby言語を用いて開発し,その有効性,すなわち事故事例を事故の種類別に記述したテキスト群を使用し,コーディングの有無に対する再分類することができる機能について検証した.誤り率はコーディングによって35.7%から12.1%まで低減する事が確かめられた.
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