研究課題/領域番号 |
17300071
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
伊藤 希 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 講師 (90251016)
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研究分担者 |
佐藤 聡 筑波大学, 大学院・システム情報工学研究科, 講師 (90285429)
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キーワード | 生物多様性 / ラフ集合 / 形式概念 / 分類体系 / オントロジー / データベース / 言語哲学 / 概念比較 |
研究概要 |
概念体系比較の前提として、体系を構築する概念の比較が必要となる。生物分類学においては個々の分類概念が研究の進展に伴って生成的に形成されるため、異なる時点において構築された分類体系が明示的に包含する分類概念はその体系の構築時点で知られている分類概念のみであり、その後記載された分類群を潜在的に包含しているかどうかは自明ではない。一方、後代の分類体系においては以前の体系構築以降に記載された分類群をも明示的に包含している場合が殆どである。そのため、それぞれの分類体系が明示的に含む分類群に与えられた学名の集合を比較しただけでは、同一の概念が異なる集合表現を持ち得るため、概念の比較として不適切である。形式概念の観点からすれば、個々の分類概念に対してそれを構成する下位概念群のみを考えるのは概念の外延だけを扱うことに相当し、内包すなわち個々の分類群の有する形質の集合を用いてこの制約を軽減できると考えられる。しかしながら、生物分類学に関するそうした形質情報はリンネに始まる250年分の電子化されていない記載論文として存在しており、形質情報を用いた概念の異同判定は現実的とはいえない。そこで、対象すなわち生物個体または生物標本による外延集合と、それらの属性すなわち形質情報による内包の対で構成される形式概念束に対し、その外延と外延の補集合の対からなる形式概念の束が同型であること、特に属性の包含関係と外延の補集合の包含関係が保存されることを示した。これにより、ある概念の外延集合すなわち学名の集合とその補集合の対を用いる事で、個体・標本集合と形質集合による形式概念と同様の扱いが可能となることが示された。外延集合とその補集合の対による形式概念は、ラフ集合におけるある概念の下近似集合とその補概念の下近似集合の対に類比的であり、この対応関係について更に詳細な検討を行なう必要がある。
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