研究概要 |
平成17〜19年度にかけて3ステップからなる研究計画を立て取り組んだ. 第1ステップ「生理反応に影響を与える可能性のある映像特徴の抽出」では,第1に,複数の映画からタイプの異なる20秒程の60シーンを切り出し,物理的映像特徴78種を抽出した.第2に情動空間と呼ぶ(緊張-弛緩)軸と(爽快-陰鬱)軸からなる2次元心理空間を構成し,時間のかかる生理実験ではなく心理実験によって,78種の映像特徴から生理反応に影響がある可能性のある映像特徴を30種に絞り込んだ. 第2ステップ「文脈に依存しない抽象映像の特徴量変化と生理的反応との関係抽出」では,第1に,有意な相関が認められた30種類の特徴量の中から,最も生理反応に影響するであろうと考えられた(相関の高かった)映像特徴量を10通りに変化させた抽象映像を作成した.通常の映画シーンの場合文脈(映画のストーリ)が情動に大きく影響するので,この影響をなくすことが目的である.第2に,これらの映像を被験者に提示し生理データとの関係を調べた.計測生理データは,側頭部と後頭部の4箇所での脳波,心拍,脈波,精神発汗の8種類である.しかしながら,物理量変化に対する生理計測値は個人差が大きく,まだ物映像特徴量と有意な相関が認められる被験者間に共通な特徴量は見いだせていない. 第3ステップ「拡張インタラクティブ進化的計算を用いた感動生理状態へ誘導する映像特徴の最適探索技術の確立」では,生理状態をターゲット(あるいは理想)生理状態に導くよう映像特徴を最適化する.第2ステップでまだ生理反応を制御可能な映像特徴が見出せていないので,インタラクティブ進化的計算の改良に研究の重点を置いた.進化的多目的最適化との組合せ,Particle Swarm Optimizationの導入,インタラクティブ進化的計算ユーザの評価モデルの導入,等が主な成果である.
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