この研究では、次世代デジタルシネマ規格として標準化が進められている4K映像(水平方向画素数約4000、垂直方向画素数約2000、800万画素クラスの精細度)と、視聴者との生理学的適合・不適合を評価することを目的とする。今年度は以下の研究を行った。 1.4K映像試料の高度化:(1)QHD方式映像撮影システムを用いてこれまでに制作したコンテンツについて、昨年度の評価実験の結果をふまえて、より的確に被験者の反応を把握できるよう高度化を行った。 2.高密度映像音響情報が人間に及ぼす影響の脳波による検討:高度化した映像音響試料をもちいて、映像視聴中の被験者の脳波を脳波テレメータで計測し、分析した。また、同一被験者をもちいて一対比較法による心理実験を行い、脳波分析結果と主観的反応との相関を検討した。 3.高密度映像音響情報が人間に及ぼす影響の生理活性物質による検討:高度化した映像音響試料を試聴している前後の被験者の血液を採取し、その中に含まれる微量の生理活性物質について分析を行った。分析指標としては、昨年度に有効性が示唆された免疫活性、神経活性物質とした。同一被験者による脳波計測や一対比較法による心理実験を行って生理活性物質分析結果との相関を検討した。 4.結果の考察:以上の結果をもとに、映像の高密度化と基幹脳活性化の指標となりうる生理的・心理的指標との関係を検討し、映像の高密度化による生理的・感性的効果についての知見を取りまとめた。被験者の視力から推計すると弁別限界を超えるはずの4K高精細映像が、それよりも密度の低い映像よりも基幹脳を活性化する効果を有することを裏付ける結果がえられた。
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