次世代デジタルシネマ規格として標準化が進められている4K映像(水平方向画素数約4000、垂直方向画素数約2000、800万画素クラスの精細度)と視聴者との適合・不適合を、生理学的心理学的手法を用いて評価することを目的とした。 そのために、まず、4K映像の特性を最大限に活かしうる映像を撮影・編集し、これに超広帯域音響を同期させた生理学的実験に適したコンテンツを開発した。この4K映像をダウンコンバートした2K映像(ハイビジョン画質)、超広帯域音響から可聴域上限をカットした可聴域音響をも作成した。 次いで、開発したコンテンツを映像・音響の条件を組み合わせて視聴者に呈示し、視聴中の脳波のテレメータ計測と基幹脳活性を反映する帯域成分の抽出分析、一対比較法による主観的印象評価実験、視聴前後の被験者の血液に含まれる微量の生理活性物質(免疫活性、神経活性物質など)の計測分析を行った。 その結果、4K映像はハイビジョン映像に比べて基幹脳を統計的有意に活性化すること、広帯域音響は可聴域音響に比べて基幹脳を統計的有意に活性化することが見出された。映像の高密度化と音響の広帯域化とによる効果を比較すると、音響の広帯域化の効果がより大きいことが注目される。主観的印象評価実験の結果、4K映像はハイビジョン映像よりも高い快適性をもつと評価された。生理活性物質計測結果では被験者数の不足により有意な差は認められなかったものの、高密度映像はよりストレスを緩和する可能性があることが示唆された。
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