研究課題
本研究課題の目的は、多様な動物種の多様な表象操作過程を分析し、比較することを通じて、この認知機能の進化のプロセスを明らかにすることである。平成17年度の主な成果は以下の通り。()内は共同研究者名。1)フサオマキザルが進んで記憶課題を選択した場合の正答率は強制的に記憶課題をさせたときよりも高く、このサルは自身の記憶の確かさに対するメタ記憶を持つことがわかった。2)ハトの錯視知覚を分析した。ハトはヒトと同様のミュラーリヤー錯視を経験するが、矢羽を主線から離すと生じる逆錯視は見られなかった。エビングハウス錯視では、ハトはヒトと全く逆の錯視を経験することがわかった。対比現象の生じ方に大きな種差が存在する可能性がある(中村ら)。3)フサオマキザルは、他者の訪問した餌場には食物がなくなっていることを推理できるが、ツパイ、ラット、ハムスターではこれが難しいことを示した(高橋ら)。4)フサオマキザルは、視線方向や目の開閉で示されるヒトの注意状態の違いを認識できることを示した(服部ら)。5)野生ハシボソガラスは、ヒトの注意の状態を認識し、的確に行動することを示した(堤ら)。6)フサオマキザルが食物を公平に分配する人物とそうでない人物を弁別するかを分析したが、明瞭な結果は得られなかった(黒島ら)。7)フサオマキザルの食物分配行動が、他個体の飢餓/飽食状態によってどのように変化するかの予備的分析をおこなった(服部ら)。8)リスザルとフサオマキザルの絵画的奥行き知覚過程を分析し、肯定的な結果を得た(酒井ら)。9)リスザルとフサオマキザルを対象に、他者の情動状態の認知に関する実験を開始した(森本ら)。10)イヌを対象に、ヒトの感情状態の認知と、音による物体の推理に関する研究を開始した(高岡ら)。他にフサオマキザルの協力行動、自制、知識の認識、ハトの計画、線分長判断、ツパイの系列学習等を分析した。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (18件) 図書 (1件)
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