研究課題
本研究課題の目的は、多様な動物種の多様な表象操作過程を分析し、比較することを通じて、この認知機能の進化のプロセスを明らかにすることである。19年度の主な成果を示す。1)記憶テストを受けるか否かをサルが選択できる課題で、引き続きフサオマキザルのメタ記憶を分析し、その存在を示唆するさらなる資料を得た。2)布の膨らみから、イヌが隠れた物体を推理できるか検討した。物体の存在は認識できるが、大きさや形状などの細部は推理できないことを示す結果を得つつある。3)イヌとシリアンハムスターが、特に記憶を要求されなかった過去の事象を手がかりにして行動できるかを調べた。これにはエピソード的記憶想起が必要である。両種とも肯定的な結果を得つつある(共同研究者:森崎、高岡)。4)キメの勾配や影で暗示される図形的奥行き感の認識を、大きさの恒常性錯視を利用して分析し、新世界ザルでは地上性の強い種に比べて、地面優位効果が弱いことを示した(酒井)。5)準野生フサオマキザル集団において、情動を示すサルを観察したサルが、その情動の原因を推理し、慰め等の行動を増加させるかを観察した。資料は現在分析中(森本)。6)ハトと幼児にコンピュータ迷路を解かせ、突然のゴール位置の変化への応答から、解決方略の計画性を比較した。両種でほぼ同様の計画性を示す結果を得た(宮田)。7)キーアを対象に、問題箱の解決方法の事前計画の可能性を分析した。資料は現在解析中(宮田)。8)食物の分配場面で、フサオマキザルは他者の取り分に感受性を示し、他者が見えるときには他者に対して「思いやり」を示す分配をする一方、見えないときには、「ねたみ」を示す分配をする場合があることがわかった(瀧本)。その他、ハトの錯視(中村、渡辺)、フサオマキザルの知覚的体制化(松野)、イヌのヒト性弁別(高岡)、情動認識(森崎)等を分析した。
すべて 2008 2007
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