研究課題/領域番号 |
17300086
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大津 由紀雄 慶應義塾大学, 言語文化研究所, 教授 (80100410)
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研究分担者 |
今西 典子 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (70111739)
鈴木 猛 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (00187741)
杉崎 鉱司 三重大学, 人文学部, 准教授 (60362331)
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キーワード | 生成文法 / 言語機能 / 言語獲得 / 言語運用 / 言語教育 / 言語知識 |
研究概要 |
本年度は全体のまとめをおこなった。主な成果は以下のとおりである。 1 文を構成する要素の一部を欠く文断片は質問に対する応答や(非)言語的文脈に依存する省略で多くみられ、このような不完全な発話は、言語獲得の初期段階(の子供の文法)では平叙叙述としてどの言語においてもみられるが、大人の文法では言語によってその可否は異なる。不完全な発話の有標性を、統語論と音韻論、統語論と意味論・語用論のインターフェスにおいて普遍文法のどのような制約の相互作用の帰結であるかを考察し、その知見に基づき、特にsyntax-discourseインターフェス条件を検討した。 2 日本語の「なに」、「なにか」が特定的解釈を持つ場合の特性について論じ、それらが内部にDPは持つがNPを欠いているQPであると分析した(廣瀬富雄と共同研究)。 3 一人の子供の言語獲得過程を観察し、VP内のargumentsの配列を獲得のプロセスから自然に導くことが可能でUGで指定しておく必要はないことを主張した。 4 生成文法理論において、一貫して普遍文法の性質の反映であると考えられている構造依存性について、心理実験を行うことにより、その生得性に対する日本語獲得からの新たな証拠を提示した。また、従来から行っている英語の前置詞残留現象の獲得に関しても、新たな事実を発見した。 5 前年度までに構築した言語機能モデルにもとづき、言語教育の改善に関する具体的提言をまとめた。 その主要な主張は、 A 母語教育と外国語教育は言語教育として有機的に連携すべきものである。 B 連携の基盤は「ことばへの気づき」である。 さらに、その提言にもとづき、教材の作成を行った。
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