研究概要 |
大脳新皮質神経細胞は興奮性神経細胞と抑制性神経細胞により構成されていて、興奮性神経細胞は、胎児期大脳新皮質の脳室帯の放射所グリアに由来する。我々は放射状グリアの娘細胞の中には、さらに繰り返し分裂を続けるものがあることが明らかにした(Wu et al., PNAS 2005)。放射状グリアを一次前駆細胞(幹細胞)とすると、娘細胞の二次前駆細胞は、非対称分裂で二次前駆細胞それ自身と三次前駆細胞を生み出し、対称分裂では二つの二次前駆細胞を生み出した。さらに三次前駆細胞は対称分裂をして対の錐体細胞を産み出した。その細胞系譜は、これまでに知られているショウジョウバエのNeuroblast cellのものに似ている。文献調査で、ショウジョウバエの他のNeuroblast cellの細胞系譜にはinterneuronとprineural gliaを生み出すものがあることを知り、マウスの神経細胞産生過程と対応比較して、大脳皮質GABA神経細胞とoligodendrocyteの関係を調べた。終脳胞のGABA神経細胞とoligodendrocyteその全て乃至は一部は大脳基底核原基に由来し、前駆細胞を共有している可能性がある。現に幾つかの論文は、oligodendrocyte markerとして使われるNG2陽性のGABA神経前駆細胞の存在を、免疫組織で報告しているが、まだ広く認められていない。我々は、GAD67-GFP knock-in mouse E18胎児大脳皮質の単一GFP陽性細胞を顕微鏡下で採取し、single-cell RT-PCRを行った。その結果、単一GFP陽性神経細胞でGAD67 mRNAとCSPG2(NG2) mRNAは共存することがあることが分かった。また我々が独自に開発したsingle-cell microarray analysis法を、GAD67-GFP陽性細胞7つに応用したところ、CSPG2, myelin basic protein, S100betaなどが優位に発現している物が見つかった。更に、PDGF receptor alphaもシグナルが強いものもあった。何れも残存するのは蛋白でなく、mRNAがGABA神経前駆細胞から検出されていることからも、マウス大脳皮質ではGABA神経細胞とoligodendrocyteは近い関係にあると考えられた。
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