本研究の目的は、現在分子生物学のターゲットであるマウスにおいて、海馬及び嗅球を含む広義の大脳皮質の細胞構成を、可能な限り定量的に明らかにすることである。特に、ニューロン・グリアの形態的特徴を明らかにし、そこに局在している機能分子・シナプス等の機能素子の分布を可能なかぎり定量的に明らかにすることで、機能的な解析のベースとなりうる形態的所見を得ることである。特に、次の4点を中心に解析を進めた。 (1)シンクロナイゼーションとの関連で生理学的解析が進んでいる電気的カップリングに対応する構造、ギャップ結合の分布を海馬、嗅球で明らかにするため、電子顕微鏡での連続切片-再構築により、我々のこれまでの研究で明らかになりつつあるギャップ結合を形成している突起間の直接・間接のシナプス結合を中心とした複雑な局所回路網の解析を進めた。更に、遺伝子改変マウスも用い、主要なニューロン間ギャップ結合蛋白connexin36の発現を解析した。この解析により特に嗅球糸球体における化学シナプスとギャップ結合とによる極めて複雑な樹状突起ネットワークが明らかになりつつある。 (2)代謝神経活動のカップリング等を考慮すれば、神経系の機能にきわめて重要な意味を持っていると考えられるastrocyte間のギャップ結合及び自身の突起間のギャップ結合(reflexive gap junction)の分布を細胞内染色とastrocyte間ギャップ結合の主要蛋白connexin43を用いた免疫細胞化学-共焦点レーザー顕微鏡での解析を進めた。 (3)免疫細胞化学的解析を進めることで、嗅球ニューロン群のマウスとラットにおける化学的性質の差異が、かなり大きいことが明らかになりつつあり、その詳細の解析を進めた。 (4)GABAニューロンにGFPを発現したマウスを用い、大脳皮質における投射性GABAニューロンの存在を検討した。
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