研究概要 |
前年度の嗅球投射ニューロン及び嗅球内での連合ニューロンの解析の過程で、同一嗅球内における内外側間を結合する連合ニューロンはCCK/NOS含有external tufted cellsが主体となるが、同側の糸球体間結合はそれとは異なるニューロンが担っているらしいとの所見を得た。近年、Aungst, et. al.(2003)は離れた糸球体間の結合を担っているのは従来考えられていたようなperiglomerular cells(PG cells)ではなく"glutamatergic excitatory short-axon cells"であると提唱した。そこで、本年度は同側の糸球体間結合を主に担っているニューロンの同定をトレーサー実験と免疫細胞化学を組み合わせて進めた。微量の逆行性トレーサーFluorogold(FG)を脳定位的に嗅球糸球体層あるいは外網状層に限局的に注入し、FG標識ニューロンの化学的・形態学的性質を解析した。その結果、同側の糸球体間結合を主に担っているニューロンの90%がある特定のタイプのPG cells、tyrosine hydroxylase(TH)-GABA positive PG cellsであることを示唆する所見を得た。更に、細胞サイズの解析からTH-GABA positive PG cellsは大小2タイプからなることが示されている。FG標識ニューロンの細胞体サイズ計測から、標識ニューロンは単一サイズのグループであり、大小2タイプあるTH-GABA positive PG cellsの大型のニューロン群が対応することが明らかになった。このことから、同側の糸球体間結合を主に担っているニューロンは大型のTH-GABA positive PG cellsであること、また、樹状突起で1・2型と分類してきたPG cellsは軸索結合でも多様で、神経回路内で異なった役割を果たしていることが示唆された。
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