研究概要 |
本研究の目的は、マウスにおいて、1)海馬及び嗅球を含む広義の大脳皮質の細胞構成、及び2)ニューロン・グリアの形態的特徴、そこに局在している機能分子・シナプス等の機能素子の分布を明らかにすることで、機能的解析の基礎となる形態的所見を得ることであった。海馬及び主嗅球について解析を進めた。 海馬では定量解析を総合し、海馬局所回路ニューロン群の全体像を明らかにした。また、ミクログリアの定量解析を進め、以前に報告したアストロサイトと比較検討し、空間的分布パターンについて明らかにした。 嗅球では以下の点について解析を進め、これまでのラットで報告されてきた所見と大きく異なる所見が得られた。1)periglomerular(PG)cellsの化学的・形態的構成の解析。糸球体の基本的構成としてコンパートメント構造、糸球体内樹状突起分布に基づく2タイプのPG cellsが、マウス主嗅球においても適用できた。しかし、ラットと異なり2型PG cellsも大部分がGABA陽性であった。2)nitric oxide synthase(NOS)含有ニューロンの免疫細胞化学、トレーサー実験、電顕観察による解析。PG cells,granule cells,short axoncells,stellate cellsに加え、他の動物で報告されてないexternal & middle tufted cellsの一部がNOS陽性で、特殊な投射ニューロンであること及び介在ニューロンとされていたNOS陽性short axon cellsの一部は投射ニューロンであることを明らかにした。3)微量の逆行性トレーサーFluorogold(FG)を脳定位的に嗅球糸球体層あるいは外網状層に限局的に注入する実験で同側の糸球体間結合を主に担っているニューロンは大型のTH-GABA positive PG cellsであることを明らかにした。
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