研究概要 |
我々はパーキンソン病などの病態において、β-synがα-synの凝集を抑制し、神経保護的に作用する内因性分子ではないかという仮説を提唱してきた. I.引き続き、β-synの神経保護作用を増強する方法としてヒートショックプロテイン(HSP)との協調的作用に関して検討中である。これに関しては、i)セルフリーの条件で、β-synとHSP27が相乗的にα-synの凝集を抑制することをイミュノブロット法や電子顕微鏡を用いて確認した。ii)さらにアデノウイルス付随ベクターにβ-synとHSP27のcDNAをサブクローニングした発現ベクターを構築し、マウス、ラットのモデル系においてそれらの発現を観察中である。 II.変異型β-syn(P123H,V70M)においては、野生型β-synにみられるような神経保護効果の喪失、あるいは神経変性効果の獲得が考えられる。これらの仮説をi)試験管においては、大腸菌で変異型β-synP123H,β-synV70Mのリコンビナント蛋白を作成し、これらが単独で凝集し、かつ、α-synの凝集を促進することをイミュノブロット法や電子顕微鏡を用いて確認した。ii)B103神経芽細胞にCMVpromoterを用いた発現ベクターをもちいてβ-synP123Hを過剰発現させた細胞株を作製し、解析中である。iii)トランスジェニックマウスに関しては、ゲノムDNAをPCRやサザンブロットなどを用いて、FOマウスにおけるβ-synP123Hのトランスジーンを確認し、さらに野生型マウスを交配して得られたF1(4ヶ月)に対し、β-synP123HのmRNA、及び、蛋白レベルにおける発現を、定量性PCR,ウェスタンブロット法,免疫組織化学等などにより解析し、2つの高発現ライン、4つの低-中発現ラインを系統化した。さらに、bleedingを繰り返しており、F2の老齢マウスに対しても同様の病理解析、及び、ロタロッドなどによる行動解析を行なう予定である III.その他、本プロジェクトに関連して1.DJ-1(Park7)の初期のパーキンソン患者の髄液における上昇2.赤血球にα-synが存在すること。3.α-synの細胞分化促進作用の機序などの知見を得ておりそれぞれ検討中である。
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