研究概要 |
本年度は下記の実験を行い、成果を得た。 Wistar系ラットから麻酔下に脳幹を摘出し、延髄孤束核を含む急性スライスを作成した。テトロドトキシン潅流下、孤束核小型ニューロンから微小興奮性シナプス後電流(mEPSC)を記録した。まず、α,β-methylene ATPを投与して、記録ニューロンがシナプス前にP2X受容体を発現する興奮性シナプス入力を受けていることを確認した。そこで、自発mEPSCが内因性のATP放出によって生じている可能性を検証するため、グリア細胞特異的TCAサイクル阻害薬であるfluoroacetate(FA、5mM)を潅流投与した。FA投与の5-10分以内に、自発mEPSC頻度は8.5±2.0SEM events/sから5.3±1.9SEM events/s(n=6)に有意に減少した。特にこの時、数100ms以内に2個以上のmEPSC eventが生じる確率が有意に減少することが確認された。この事実は、グリア細胞の何らかの自発的活動が複数のシナプスを同期的に活性化させて同期度の高いグルタミン酸自発的放出を誘発すると解釈される。さらに、caged ATPとlaserphotolysisを用いた時間・空間限局的ATP投与を用いて、mEPSC頻度増大効果の減衰特性がwashout後に急速に放出促進が集結する群と数分以上持続する群の2群に大別されることを見出した。また、P2Y1受容体作動薬ADPおよび2meSADPはmEPSC頻度を増加し、この作用はP2Y1受容体遮断薬MRS2179で抑制された。以上より、アストロサイトネットワークの自発的な活動が自発的グルタミン酸放出を直接誘発する事実、ならびに、その影響がアストロサイトからの内因性ATPの放出に依存する可能性が示された。
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