研究課題
『脳の可塑性研究』は、『シナプスの可塑性研究』として行われてきた。これまで私は、グリア細胞で最大数を占めるアストロサイトが、ニューロンに寄り添い、液性因子ATPを放出することにより、シナプス伝達を制御することを明らかとした(Koizumi et al., PNAS, 2003)。本研究では、ニューロンの10倍以上の多数を占めるグリア細胞の可塑性を切り口として、アストロサイトの可塑性に注目し、この可塑的な変化が、近傍ニューロンのシナプス可塑性に与える影響を明らかにする。炎症性モデルを作る際に頻用される、リポポリサッカライド(LPS)でアストログリアを刺激すると、GPCR型P2受容体のP2Y2及びP2Y6受容体の発現が亢進した。またGPCRの細胞内シグナルを調整するRGS群のうちLPSにより、RGS2が特異的にその発現を現象させた。アストロサイトはATPをgliotransmitterとし、グリア細胞間及びグリア-神経細胞間でコミュニケーションを図るが、LPS炎症時には、これらP2Y2及びP2Y6受容体の発現亢進とRGS2の減少により、P2Y6(P2Y2)受容体を介する応答のみが、極端に亢進する事が明らかとなった。通常時は、アストロサイトは主にATP/P2Y1受容体を介する応答性がメインであるが、LPSに曝された時のような炎症時にはadenine nucleotide系からuridine phosphate経路へとそのコミュニケーション様式が変わることが明らかとなった。今後は、このような、炎症時のアストロサイトの機能変化/可塑性変化が、シナプス伝達及び神経活動に与える影響を明らかにする予定である。
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Purinergic Signaling (印刷中)
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