研究課題
アストロサイトの変化がシナプスの可塑性に与える影響を明らかにする目的から、グリア伝達物質ATPが海馬神経細胞のムスカリン様アセチルコリン受容体(M1-ACh)発現に与える影響を検討した。アストロサイト由来ATPは、海馬神経細胞のP2Yl受容体に作用して、細胞内Ca^<2+>上昇を引き起こす。このとき、約50%のP2Yl受容体発現神経細胞にはM1-AChが共発現していることが明らかとなった。ATP及びADPにより海馬神経細胞のP2Yl受容体を刺激すると、P2Y1受容体依存的にM1-AChの発現が充進した。アストロサイトは恒常的にATPを放出することにより、周辺細胞とP2Y1受容体を介して連絡を取っている。従って、P2YI受容体依存的なM1-ACh受容体発現が、アストロサイトのグリア伝達物質ATPの基礎遊離に起因しているか否かを検討した。P2Y1受容体拮抗薬単独処置によりM1-AChの発現が低下したことから、Ml-AChはtonicregulationを受けていることが示唆された。また、この現象は神程・アストロサイト共培養系のみで認められ、神経細胞のみの系では観察されなかったことから、M1-AChのtonic regulationのメカニズムにアストロサイトからのATP基礎遊離が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。申請者らは以前、アストロサイト由来ATPが海馬シナプス伝達をダイナミックに制御することを示した。本研究結果は、アストロサイトが即時的応答だけでなく、神経伝達物質受容体発現を長期にわたり制御することにより、シナプス可塑性に強い影響を与えることを示唆するものである。
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