研究課題
アストロサイトの変化がシナプスの可塑性に与える影響を明らかにする目的から、グリア伝達物質ATP放出メカニズムを解析し、効率変化が変化するか否かを検討した。先ず、微量ATP放出変化の測定方法の開発を行った。頻用されるoff-line luciferin-luciferase(LL)法では、微細な変化を観察出来なかったため、細胞内Ca2+濃度([Ca2+]i)変化の時・空間的解析を主体としたBioassay法、on-line LL法、さらにacridine orange (AO)によるATP含有小胞のイメージング法を開発した。これににより、アストロサイトが開口放出によりATPを放出していることを明らかとした。アストロサイトのアウトプット能の効率変化に関する解析は、これまでほとんど行われていない。それは、ATPの放出が自由拡散によるものと考えられていたからと考えられる。本研究結果により、アストロサイトが調節性及び積極性に富む開口放出により、情報を発信し、シナプス伝達の効率、つまり脳の可塑性変化に強く影響している可能性を明らかとした。さらに、昨年、ATPを小胞内にパッキングする小胞型ATPトランスポーター(VNUT)の存在が報告された(Sawada et al., PNAS 2008)。VNUTはアストロサイトが開口放出を行うために必須の分子である。Anti-VNUT抗体による免疫細胞学的検討により、アストロサイトにはこのVNUTが強く発現していることを明らかとした。また、VNUTの機能を阻害するbafilomycin AはアストロサイトからのATP放出を抑制した。以上、アストロサイトはATP開口放出能を有すること、また調節性に富むこのアウトプット能を変化させることにより、シナプス可塑性に強い影響を与えている可能性が示唆された。
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