研究課題
シナプス前終末にあるCa^<2+>チャネルは多種類あり、エクソサイトーシスとエンドサイトーシスに関与している。我々はショウジョウバエの神経筋シナプスにおいて3種類のCa^<2+>チャネルを区別し、それぞれの機能と分布を研究している。そのうちの一つcacophony(cac)Ca^<2+>チャネルはcacophony遺伝子によってコードされていて、エクソサイトーシスの際に働いている。この遺伝子に蛍光標識EGFPをつけたトランスホーマントを用いて、その前終末における分布を調べ、次のような所見を見出した。1)cac Ca^<2+>チャネルは小さなクラスターを作り、前終末のシナプスの中央部に存在する。したがってこのCa^<2+>チャネルが開口することによっておこるCa^<2+>の流入は小さな部位に限局していることが推測される。2)cac Ca^<2+>チャネルのクラスターは均一の大きさではなく、その大きさ、すなわちCa^<2+>チャネルの数に大きなばらつきがある。このことはそれぞれのシナプスにおいてCa^<2+>流入量が異なり、分泌確率が異なっていることを示唆している。3)またその分布は一様ではなく、シナプスブートンのわきの方に多く、上下の面には比較的少ない。このことはシナプス小胞の分布と関連している。Exo/Endo cycling poolに属するシナプス小胞がブートンのまわりに集まりドーナツ状になることが知られているが、その分布にcac Ca^<2+>チャネルの分布とには密接な関係がある。また、cac Ca^<2+>チャネルの完全欠失株の幼生を用いてシナプス伝達を調べたところ神経刺激によっておこる同期した小胞の放出は完全に欠失していた。このことはcac Ca^<2+>チャネルのみがエクソサイトーシスに関与していることを示している。ただし非同期のシナプス小胞放出はこの完全欠失株においてもおこることから、他の種のCa^<2+>チャネルも放出部の近傍に存在することをうかがわせる。同期性、非同期性放出はともにクモ毒、PLTII、によって抑制される。一方エンドサイトーシスを主として抑制するLa^<3+>はシナプス伝達に関与しない。したがってLa^<3+>感受性チャネルは放出部位から離れたところにあると思われる。エクソサイトーシスに関与するCa^<2+>チャネルの一つのクラスター内の数は、たかだか数十個であると推定されている。この数がシナプス伝達の効率を支配する因子の一つである可能性が大きい。
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Book Chapter ; "Drosophila Neuromuscular Junction"(ed. V.Butnik and C.Ruiz.)(Elsevier) (in press)