研究概要 |
1.心筋トロポニンTΔK210拡張型心筋症ノックインマウスの解析 心筋トロポニンTΔK210拡張型心筋症ノックインマウスの解析の結果、この変異のためにミオフィラメントのカルシウム感受性低下が起き、生体はそのために生じる心臓ポンプ機能の低下を心拡大と同時に様々なイオンチャネルやサルコメア蛋白質分子のリモデリングによって巧妙に代償しようとするが、皮肉なことにその結果致死的不整脈発生のリスクが著しく増加し突然死に至る確率が高くなることが明らかになった(Circ Res, in press)。このように、本研究室において世界で初めて作出に成功した拡張型心筋症ノックインマウスを使うことにより、心筋トロポニンTΔK210変異によって引き起こされるヒト拡張型心筋症の詳細な病態発現機構を解明するという当初の目標を達成することができた。 2.新規ノックインマウスの作製 肥大型および拡張型心筋症において実に多くの突然変異が心筋トロポニンTにおいて見つかっている。これまで肥大型あるいは拡張型心筋症という大別して2種類に分類されていたものが遺伝子変異から見ると実はかなり異なる病態をもつことが明らかになってきた。単一遺伝子病であってもその遺伝子の変異部位により予後や病態進行速度などがそれぞれ異なると考えられる。本年度の研究では、心筋トロポニンTミューテーションの中で肥大型心筋症を引き起こすI110FとS179F,拡張型心筋症を引き起こすR141WとA172Sに対するノックインマウスの作製に必要なターゲティングベクターすべての構築に成功した。S179Fに関してはさらにキメラマウスの作製まで完了することができ、肥大型心筋症ノックインマウスの作製に道を開くことができた。
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