研究概要 |
サルにバーチャルリアリティ(VR)建造物内を指定した部屋に移動するナビゲーション課題を訓練し、頭頂葉内側領域および脳梁膨大後部皮質より課題遂行中のニューロン活動を記録した。ナビゲーション課題では、サルに部屋の内部を呈示して行き先を指示し、サルはジョイスティック操作により、指示された部屋に移動する。移動は決められたチェックポイント間の移動(前進)と、チェックポイントにおける方向転換によって行う。頭頂葉内側領域(主に7m野)では、建造物内の特定の場所で選択的に活動するニューロン、特定のルート途上における特定の場所で選択的に活動するニューロンなどが記録された。この結果は頭頂葉内側領域のニューロンが、ナビゲーションに必要とされるルート知識に関わることを示していると考えられる(Sato, et. al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103:17001-17006,2006)。さらにこの結果を補強するために、実験条件を改善するとともに、頭頂葉内側領域に加え脳梁膨大後部皮質においてより重点的にニューロン活動の記録を行った。前述の実験条件では、異なる部屋にむかうルート間における重複が少なく、ニューロン活動の変化の要因としての場所とルートの関係が特定できないケースが見られたため、これを改善するためルートの重複と分岐点を増やし、すべてのルートで他のルートと一部分が重複するように実験条件を変更した。またこれまで頭頂葉内側領域において記録されたニューロンは、その時点でサルがいる場所や次に行う動作に選択性を示すものが多かったが、脳梁膨大後部皮質からもより重点的に記録を行うことで、異なる特性のニューロンが記録され、現在までに前述のニューロンと同様、場所やルートに選択性を示すニューロンに加え、行き先呈示期とそこに向かうルート途上の特定の場所の両方で選択的に活動するニューロンなどが記録された。
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