研究概要 |
ボツリヌス毒素は、1分子の神経毒素(約150kDa)に非毒非血球凝集素成分(NTNHA)と3種の血球凝集素成分(HA-17, HA-33, HA-70)サブコンポネントの合計5種のタンパク質が非共有結合的に会合し、合計650kDaのサブユニット構造の複合体として培養液中に産生される。毒素複合体のサブユニット構造は、毒素が消化管での酸性条件や種々の蛋白分解酵素に曝されるという過酷な条件下でも強い耐性を示し、神経毒素を腸管から標的細胞に送達するという特異的な構造を有している。本研究の最終目標は、神経毒素を除いた無毒成分複合体を経口的運搬役として新たな医療用蛋白ペプチドなどを送達する革新的システムの構築である。 これまでの研究成果として、D型ボツリヌス毒素複合体(650kDa)は、神経毒素およびNTNHAが各1分子、HA-70が2分子、HA-33およびHA-17が各4分子からなる12量体サブユニット構造であることを報告した。今回、複合体から単離した各構成成分の任意の組合せによる各種の再構成複合体および単体分子に対するトリプシン感受性実験により、サブユニット間の相互作用領域の特定を試みた。 その結果、複合体における神経毒素とNTMHA分子のNおよびC末端側などの相対的位置、複合体の最も表面に位置しているHA-33/HA-17の結合部位、さらにこれらを結びつけているHA-70の特異的な蛋白化学的性質の解析から、ボツリヌス毒素複合体における全ての構成成分の立体配置を初めて提案した(Microbiology,2005)。薬物送達システム構築のため、より詳細なサブユニット問相互作用の情報を総合し、次年度からは毒素複合体および個々のタンパクの結晶化とX線解析などにより、毒素複合体の高次構造および機能を明らかにする。
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