リン脂質小胞体に限らず、一般に微粒子懸濁液の体内投与では、静脈官投与を含めその大部分が短時間に臓器(主に肝と脾)に集積する傾向がよく知られている。投与条件と投与法にもよるが、前述と違って個体の骨髄に集積する小胞体を見出した。この集合現象の詳細を解析し、薬物送達の制御に利用することを目的とする。 本年度は、脂溶性薬物のモデル化合物を微粒子に担持させ、物性を明らかにし、投与試験まで実施。特に、脂溶性薬物の送達制御に適した微粒子に関し知見を得た。通常、脂溶性薬剤は水溶液として取扱えないため血管内投与が困難であるが、微粒子分散液とすることにより投与可能になる。脂溶性物質は小胞体の二分子膜中に可溶化でき、粒子径の制御された微粒子分散液として安定であった。投与試験において、小胞体に担持した脂溶性物質が骨髄に輸送されることが確認されたが、投与後に担持物質が小胞体から血液成分に移行することが輸送効率低下の原因となった。このため、脂溶性薬物の担持により適した微粒子として水中油滴型小球に知見を拡張した。 油滴小球では油層に脂溶性物質が担持されることを確認。小胞体と同じ方法により粒子径を制御し、安定な微粒子分散液を得た。この表面は小胞体と同組成の脂質で安定化されており、ゼータ電位測定などから、小胞体と油滴小球で表面物性の類似が確認できた。投与試験では、小胞体に比較して輸送効率が向上することを確認。脂溶性薬物の送達制御では、微粒子の体内動態にあわせ血液成分への移行速度が重要な因子となる。
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