研究概要 |
室温で溶液(ゾル)状態で,体内に注入すると体温でゲル化(ゾル-ゲル転移)し,生体内で無毒な成分に分解される生分解性温度応答性ポリマーは,インジェクタブルポリマーとしてDDSや再生医療の分野で有望視されている。今年度は特に,分岐構造を持つマルチアーム型ポリエチレングリコール(PEG)とポリ乳酸(PLLA)とからなるブロック共重合体(8arms PEG-b-PLLA)を基盤とする温度応答性ゾル-ゲル転移ポリマーについて検討した。 1)8arms PEG-b-PLLAの各末端にコレステロールを導入したポリマー,および2)光学異性体の関係にある8arms PEG-b-PLLA-b-PEGと8arms PEG-b-PDLA-b-PEGの混合物を合成し,その温度応答性とゲル状態での力学強度について検討した。その結果,1)2)とも室温と体温の間にゾル-ゲル転移点を示し,ゲル状態において,これまでに報告されている生分解性ゾル-ゲル転移ポリマーよりも高い力学的強度,(1)貯蔵弾性率5,000Pa以上,2)貯蔵弾性率10,000Pa以上)を示すことが明らかとなった。さらに,このポリマーを血清入り培地に溶解してL929マウス繊繊維芽細胞を懸濁させ,加温して細胞封入ゲルを作成し,所定時間インキュベートしたところ,細胞は死滅せず良好に増殖することが確認された。さらに,これらのポリマーから調製したゲルは生理条件下において数週間で加水分解して可溶性となることも明らかとなった。 これらの結果より,本研究で開発したポリマー群は,インジェクタブルな組織再生用足場材料やドラッグデリバリー材料として有用であることが示された。
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