カーボンナノチューブ(Carbon Nanotubes; CNT)の電気特性を利用した超高感度検出技術と、固体表面修飾技術並びにバイオテクノロジーの融合により、迅速・高感度に測定できる分子間相互作用検出装置を創製し、その応用展開としてヒト血液検査システム、特に感染症原因ウイルス検出システムを構築することを目的とした。 (1)化学気相成長(CVD)法による素子の作製 センサ素子として機能する基板作製の歩留りおよび素子個々の均一性を揃えるため、製造プロセスの見直しを行い、(i)金属多層膜触媒構成によるCNT成長密度制御、(ii)CVD成長条件によるCNT成長密度制御、(iii)触媒面積によるCNT成長密度制御、(iv)触媒形成蒸着器ロードロック室増設、(v)電極パターニング・リフトオフ工程の改善、(vi)プローブカードを用いた24素子自動計測システム導入、(vii)金属的特性を持つCNTの選択的切断、を改善することにより、導通率が12.5倍、FET特性を示す素子の歩留まりが5.2倍に向上した。 (2)自己組織化膜を介したCNT固定化によるCNTセンサーの作製 シリコン基板上に、シラン化試薬を介してアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)のゾルゲル層を作製し、酸/過酸化水素混液で処理したCNTを選択的に固定化することで、導通率が〜100%、FET特性を示すものが〜60%の割合で作製できた。当該法により作製した素子は、再現性よくpH測定できた。また、 CVD法により作製した素子より低感度であるが、抗原抗体反応の検出も可能であった。 (3)HBs抗原タンパク質の検出 CVD法により作製した素子に抗HBs抗体を固定化し、HBs検出用CNT-バイオセンサーとし、10fg/ml〜100pg/mlの濃度範囲で再現よく測定できた。本測定系に終濃度5%のヒト血清を添加しても、測定感度ならびに精度に影響がなかった。
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