研究課題
本研究では、平成17年度からの3年間において、腫瘍血管新生阻害効果と粒子線治療の相乗効果を最大限に活用する新しい低線量・低副作用の粒子線治療技術の開発をめざしている。平成18年度では、前年度に開発・完成した粒子線治療実験用照射システムを用いて、ラットなど動物実験実施に必要なエネルギーフィルターの開発、3次元腫瘍形状に一致した高線量域を形成できるスポットビームスキャニング照射技術開発、動物粒子線治療用の治療計画システムの開発、動物由来の悪性腫瘍細胞を用いた陽子線照射実験など、本研究の最終目的の治療実験ための基礎研究開発を行った。小動物実験用のエネルギーフィルター開発では、ラットから小型犬までの動物に移植する腫瘍標的の大きさを想定して、5mmから20mmまで5mm間隔で4種類の拡大ブラッグピークを形成できる各種リッジフィルターを開発し、治療に必要な精度の約5%平坦度の各種拡大ブラッグピーク形成に成功した。一方、スポットビームスキャニング照射法によって体内3次元高線量域を自在に形成することにも成功し、ワブラー法で困難な症例においても精密な粒子線治療実験の実施が可能となった.さらに、動物治療実験において目的通りの吸収線量分布を標的体積に投与するために、動物のX線CT画像を利用した小動物用粒子線治療計画システムを開発した。また、標的駆動装置などの動物用治療関連機器の開発も行った。治療実験の基礎となる生物学的データとして、動物由来の悪性黒色腫や扁平上皮癌等の細胞を用いて陽子線の照射実験を行い、細胞生存率の吸収線量依存性のデータからイヌなどの悪性腫瘍に対する陽子線の生物学的効果比を取得した。動物の細胞に対する陽子線の生物学的効果比は過去に報告がなく初めてのデータである。来年度は本研究の最終年度であり、本研究で提唱する低侵襲粒子線治療の動物実験を行い研究成果をまとめる。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (1件)
CYRIC News 40
ページ: 8-10