研究概要 |
血管新生は癌の増殖の本質であることが近年明らかになった。超音波の抗腫瘍作用については報告があるが、超音波の血管新生(angiogenesis)に対する直接的な影響に関しては明らかではなく、我々が初めてその作用について検証した。まず、超音波の管腔形成に与える影響と薬剤作用増強効果についてin vitroで追求し、さらにin vivoで同効果についての検討を行った。ヒト臍帯静脈内皮細胞と正常ヒト皮膚繊維芽細胞のCo-Culture Modelを用いて、超音波照射群、薬剤投与群、超音波照射・薬剤投与併用群、対照群を設定して、VEGF誘導下の管腔形成に与える影響を調べた。超音波機器はSonitron2000(Richmar,USA)を用いた。In vivoでは、我々が樹立した子宮肉腫細胞株を数種(FU-MMT-1,FU-MMT-3,他)使用した。1)超音波は低出力(1MHz,1.OW/cm2)の条件下では、短時間照射は管腔形成を維持または促進する可能性を示したが、照射時間の延長とともに管腔形成を抑制した。2)超音波照射・フマジリン誘導体(TNP-470)投与併用群は、薬剤単独投与群に比較して有意に管腔形成抑制効果を示した。3)抗腫瘍剤である5-DFURとパクリタキセルは、共に低濃度下で管腔形成抑制効果を示すことが確認された。4)In vivoの研究で最も良い結果が出た組み合わせはTNP-470と超音波照射であった。同併用群はそれぞれの単独治療群と比較して、有意に抗腫瘍効果及び血管新生阻害効果を認めた。今後の臨床試験の導入において有益な基礎研究と成り得た。
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